2018年11月の俳句

  • 石蕗の黄に 十一月は しづかな月

    2018.11.30 放送

    作者:後藤比奈夫

    石蕗は、秋の終わりから冬のはじめごろ、庭の隅などにひっそりと咲く花です。その花の黄色を見つめながら、十一月は静かに過ぎてゆくなあ、と噛みしめています。行楽でにぎやかな十月と、年末で慌ただしい十二月の間に挟まれて、十一月は、たしかに静かで穏やかな印象です。さて、みなさんのこの十一月は、どんなひと月だったでしょうか。

    (監修:神野)

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  • 落葉して 昔むかしの トースター

    2018.11.29 放送

    作者:大木あまり

    秋の紅葉が散って、地上に降りつもると、冬の落葉の季節です。キッチンの窓から外の落葉を眺めながら、昔ながらのトースターで、パンを焼いているのでしょう。あるいは、サクサクと落葉を踏む音に、トーストしたパンの食感を思い出したのかもしれません。パンの焦げ目と、落葉の焦げ色と。レトロななつかしさに満ちた一句です。

    (監修:神野)

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  • 音ありしとき 野兎の 早や遠し

    2018.11.28 放送

    作者:武田敬子(今治市)

    冬の貴重なたんぱく源として、狩の対象となっていた兎は、今でも冬の季語として、俳句に詠まれます。野山を歩いていて、ガサッと音がしたので振り返ると、その音の主であろう野兎は、早くも遠くへと走り去っていました。人の気配を察知して急ぐ兎の、跳ねる鼓動がきこえてきそう。兎のいのちが躍動する一句です。

    (監修:神野)

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  • 霜柱 こはされたくて きらきらす

    2018.11.27 放送

    作者:松本京子(今治市)

    朝の道に霜柱が輝きはじめたら、本格的な冬のはじまりです。幼いころ、登下校の途中などに、霜柱をサクッと踏んだ経験、ありますよね。霜柱の輝きに注目したこの句。たしかに、あのきらきらした光は、ここにいるよと居場所を教えているようです。すぐ壊れてしまうはかなさゆえに美しい、霜柱の本質をとらえた句です。

    (監修:神野)

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  • 白鳥来 新譜の 届きたるやうに

    2018.11.26 放送

    作者:仲村折矢

    あたたかい日本で冬を過ごすために、寒い北方から飛来してくる白鳥も、冬の季語になっています。湖や川に、今年も白鳥がやってきました。その白く大きな翼を見ていると、まるで新しい楽譜が届いたような、嬉しい気持ちになったのです。これからはじまる冬への期待が、すこやかな比喩で切り取られています。

    (監修:神野)

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  • 乳牛の乳房 勤労感謝の日

    2018.11.23 放送

    作者:広渡敬雄

    今日は「勤労感謝の日」。勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう、という主旨の国民の祝日です。豊かな栄養を含み、バター、チーズ、乳酸菌飲料などの原料としても欠かせない牛乳を毎日生産してくれている乳牛たちにも感謝を、という作品です。勤労にいそしんでいるのは、人だけではないのですね。そして乳房こそ、乳牛たちの勤労のシンボルなのではないでしょうか。

    (監修:池内)

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  • 大根抜くとき 大根に力あり

    2018.11.22 放送

    作者:青柳志解樹

    冬を代表する野菜の一つが大根。日本では、世界で最も多い百種類以上の大根が栽培されています。大根の収穫はおもに冬の初めの作業。俳句では「大根引き」「大根抜く」などといいます。青々とした葉を持ち、腰を据えて引き抜くと、真っ白でみずみずしい大根が土の中から現れます。力のある大根は、おでんにしても風呂吹き大根にしてもおいしそうです。

    (監修:池内)

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  • 風向きが 行き先となり 綿虫は

    2018.11.21 放送

    作者:土肥あき子

    冬の初め、空中をふわふわと飛ぶともなく漂う小さな虫の集団。綿ののように見えるので「綿虫」、空を舞う雪のようでもあるので、「雪蛍」ともいいます。綿虫はアブラムシ科の昆虫で、綿のように見えるのは、この虫の分泌物です。まさにこの句のように、行き先を風に任せて漂っているようですが、綿虫の集団移動は、寄生している木を住みかえるためだともいわれます。

    (監修:池内)

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  • 夕空に 朱を加へたる 木守柿

    2018.11.20 放送

    作者:加藤耕子

    柿の実を収穫したあとに、一つだけ木に残しておく実を「木守柿」といいます。来年も沢山柿がなるように、木を守ってもらうという祈りのこめられた季語です。実際には鳥が食べることが多く、鳥にも実りを頒つ意味もあると考えられます。夕空に鮮やかな朱の色をぽつんと残す木守柿。どこか郷愁を誘われる情景です。

    (監修:池内)

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  • 命日に咲く 奥津城の 帰り花

    2018.11.19 放送

    作者:島村正

    小春日和に誘われるように、本来は春に咲くはずの花が一輪二輪咲くことがあります。この季節はずれの花が「帰り花」。桜以外の草花や木の花もありますが、ただ帰り花といえば、桜の帰り花のことです。この句の桜の木は、大切な人のお墓の傍らに植えられているのでしょう。あたかも命日に咲いた帰り花は、亡き人からの便りかとも思われます。

    (監修:池内)

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  • 団栗や 大きな山に 大きな樹

    2018.11.16 放送

    作者:宍野宏治(松山市)

    クヌギ、コナラ、シイ……団栗を落とす木は、どれも大きな広葉樹です。大きな山には大きな樹が育ち、その樹々がたくさんの団栗を降らせ、山をゆたかにするのです。リスや野ねずみも、よろこんで団栗をかじるでしょう。山の懐の大きさを、シンプルな言葉で、堂々と切り取りました。

    (監修:神野)

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  • 動かせぬ団栗に 根の出でてをり

    2018.11.15 放送

    作者:抹茶金魚(愛知県)

    拾おうと思って団栗をつまむと、意外な抵抗に遭いました。覗いてみると、団栗は割れて、そのすきまから根が出ています。落ちてからしばらく時間が経ったので、はや土に根づきつつあるのです。団栗も木の実。芽吹いて、いつか大樹になる種です。未来を目指して生きる団栗の、たくましさに触れた感動が、十七音にしずかに行きわたります。

    (監修:神野)

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  • 兄と待つ 移動図書館 櫟の実

    2018.11.14 放送

    作者:じゃすみん(新潟県)

    定期的にまわってくる移動図書館を、お兄さんと一緒に待っています。島や山あいなど図書館のない小さな町に住んでいるのでしょう。くぬぎの実は、団栗の中でもいっとう大きくて、コロンと丸いかたちをしています。大きな櫟の木の下、団栗を拾いながら、今度はどんな本を借りようか、わくわく胸を弾ませています。幼い兄弟のすこやかな日常です。

    (監修:神野)

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  • どんぐりや 山猫の文 いつ届く

    2018.11.13 放送

    作者:松山帖句(松山市)

    宮沢賢治の童話「どんぐりと山猫」では、少年・一郎に、山猫から手紙が届きます。山へ行き、どんぐりたちの裁判をみごと解決した一郎は、裁判長の山猫から、黄金のどんぐりをもらって帰るのです。へたくそで間違いだらけの手紙が届けば、特別な体験が待っているはず。ふと見つけた団栗に、かつて愛した童話の世界を、なつかしく思い出しました。

    (監修:神野)

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  • 道迷ひ来て 団栗のまだ青し

    2018.11.12 放送

    作者:武知眞美(松山市)

    道に迷って途方に暮れて、足元に視線を落とせば、団栗が転がっています。拾い上げた団栗は、まだ茶色くなる前の青い団栗でした。そのういういしい青さに、もう少し歩いてみようと、前を向けそうな気がしたのでしょう。人生の道に迷っている人に、まだまだこれからだよと励ましているようで、さりげなく元気をくれる俳句です。

    (監修:神野)

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  • 小春日の とりわけ母の笑顔かな

    2018.11.09 放送

    作者:成井侃

    立冬を過ぎても厳しい寒さは訪れず、しばらくは穏やかな日和が続くものです。まるで春のようだということから、本当の春と区別して「小春」「小春日」といいます。本格的な寒さを迎える前の、ほっと一息つくような日和。こんな日にふさわしい情景といえば、何といってもお年を召したお母さんの明るい笑顔といえるかもしれません。

    (監修:池内)

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  • 頂に雲を集めて 神の旅

    2018.11.08 放送

    作者:大高翔

    今日は旧暦の十月一日。神無月に入りました。この月は全国の神々が出雲に集まるといわれています。この神々の大移動が「神の旅」です。留守を守る留守神を除き、全国の八百万の神々は出雲大社に集い、縁結びの相談をするとも考えられています。神々は山の頂に集められ雲に乗って、これから出雲へと旅立つのでしょうか。

    (監修:池内)

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  • 対岸は 錦を保ち 冬に入る

    2018.11.07 放送

    作者:大橋晄

    今日は二十四節気の「立冬」。暦の上では冬に入りました。本当に冬らしくなるのはもう少し先ですが、厳しい冬を迎えるという緊張感のある季語です。川の対岸を彩っている紅葉は、鮮やかな錦を保ったままです。紅葉は、むしろこれからが見頃かもしれません。ただし俳句では、立冬を過ぎてからの紅葉は冬紅葉と呼ばれます。

    (監修:池内)

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  • ゆく秋の すつくと白き 灯台よ

    2018.11.06 放送

    作者:中嶋鬼谷

    「行く秋」。「秋の別れ」「秋の名残」ともいいます。単に秋が過ぎ去るだけではなく、秋の終るのを惜しむ心のこめられた季語です。移りゆく季節を、いわば旅人になぞらえて、「行く」と表現しているのでしょう。秋の終りの澄み切った大気の中で、白い灯台がすっくと立っている姿が、ひときわ鮮やかに感じられます。

    (監修:池内)

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  • 火の恋し 漁火ひとつ なき夜は

    2018.11.05 放送

    作者:浅井陽子

    秋も深まり朝夕寒さを覚えるようになると、そろそろ火の気が恋しくなってきます。そんな気分を表す季語が「火恋し」。「炭火恋し」「火鉢欲し」ともいい、暖房といえば火鉢や囲炉裏であった時代の名残のある季語です。沖に灯る漁火も火の色のぬくもりを感じさせてくれますが、そんな漁火さえ一つもない夜は、よけいに火が恋しくなる、という一句です。

    (監修:池内)

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  • 透く水の 流れて昏し 櫨紅葉

    2018.11.02 放送

    作者:駒木根淳子

    晩秋の寒さや霜によって、落葉樹の葉が赤く染まる現象が紅葉。代表的なものは楓紅葉や、この句の「櫨紅葉」でしょう。木蠟を採るので蠟の木ともいわれる櫨は、晩秋に深紅の色に紅葉します。この句は、山に囲まれた谷川の澄んだ水に映っている櫨紅葉でしょうか。愛媛では紅葉が見頃になるのは今月の下旬です。立冬を過ぎると、紅葉は「冬紅葉」となります。

    (監修:池内)

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  • 秋深し 余命いくばくかは知らず

    2018.11.01 放送

    作者:山本嘉郎

    今日から十一月。秋もいよいよ深まった感じがします。「秋深し」という季語の奥には、秋の淋しさやもの悲しさと同時に、深閑とした秋の静けさが感じられます。作者は、現在87歳の方。このあと何年生きられるかは分からないご自身の人生と、深まる秋の静けさを重ね合わせた、しみじみとした心境を描いた一句です。

    (監修:池内)

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5月のお題は
「葉桜(はざくら)」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
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