2022年10月の俳句

  • 献血へ ハロウィンの輪を 横切って

    2022.10.31 放送

    作者:なつ はづき

    今日はハロウィンです。秋の収穫を祝い、悪霊を遠ざける行事で、日本でも近年、仮装を楽しむお祭りとして定着してきました。ハロウィンに盛り上がる街。集まる人々の輪を横切って、献血へ向かいます。ハロウィンとは関係のない日常の営みが、喧騒の裏で淡々と続いていることに、静かにスポットをあてました。

    (監修:神野)

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  • 覗いてる豚の顔にも秋風

    2022.10.28 放送

    作者:種田山頭火

    昭和五年の今日の日記「行乞記」に記された句です。この日、山頭火は宮崎県の日向市富高を托鉢しました。豚小屋に遭遇したようです。秋風は、あまねく等しく、吹き渡ってくれて、豚は目を細めていたかも。「覗いてる」という表現に、豚の愛らしさを感じます。「けふのべんたうも草のうへにて」も、この日の日記にある気分のよい山頭火の一句です。

    (監修:谷)

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  • まだどこか 夜空の青さ 林檎熟れ

    2022.10.27 放送

    作者:池田さち子

    帰宅途中に仰いだ空でしょうか。それとも庭かベランダから見上げた夜空?。とっぷり暮れた空に青さを見出したのは、何かすてきなことがあった一日を思わせます。星も青く煌めいていそうです。そんな夜空と、地上に実ったほの赤い林檎が共鳴して、魅惑的な時空を生み出しました。

    (監修:谷)

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  • 金柑を ひとつ失敬 山歩き

    2022.10.26 放送

    作者:向井由利子

    失敬するとは、他人のものを黙って取ってしまうこと。ですが、この句には不思議と悪意が感じられません。シッケイという言葉のどこか明るい響きのせいでしょうか。山歩きの道端で出合った可憐な光の粒、金柑。思わず捥いだひとつの匂いを楽しみながら、足取りはいっそう軽快になっていそうです。

    (監修:谷)

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  • コンスタンの アドルフ読みぬ 秋の暮

    2022.10.25 放送

    作者:中原中也

    詩人・中原中也のある日の「日記」にふと出てくる俳句です。小説『アドルフ』は、青年アドルフと美しい伯爵夫人の恋の行方を精緻に描いたコンスタンの自伝的小説。この日は続けてもう一句「みの虫がかぜに吹かれてをれりけり」と、作ります。最後の一行は「かくして秋は深まれりけり」と記して、晩秋の詩人の頁は終わります。

    (監修:谷)

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  • 鰯雲 マイクで子ども 叱ってる

    2022.10.24 放送

    作者:田 彰子

    運動会やその練習風景を想像します。あるいは、朝礼の校長先生?マイク越しに叱られた生徒は何をしていたのでしょう。全校生徒から注目を浴びてしまって、この子ちょっと気の毒。場外にも漏れてしまった様子。鰯雲が出ると降雨の前兆と言われます。空模様も気にしつつのマイクの声かもしれません。

    (監修:谷)

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  • バンマスの 里は魚沼 今年米

    2022.10.21 放送

    作者:松田夜市(松前)

    バンマスとは、バンドリーダーの略で、バンドの代表者のことです。長く一緒に音楽を続けているバンマスも、ふるさとは魚沼。コシヒカリが有名な、新潟の米どころです。きっと時期が来れば、田舎の新米をバンドのみんなに配るのでしょう。頼りになるバンマスの来し方に、ふと思いを馳せる秋です。

    (監修:神野)

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  • コッヘルに ひかり零して 今年米

    2022.10.20 放送

    作者:綾竹あんどれ(東京)

    新米のことを、今年とれたお米なので、今年米ともいいます。また、コッヘルとは、アウトドアで使うお鍋です。キャンプに来て、新米を炊くのでしょう。コッヘルに新米をそそげば、きらきらと白い光が零れます。その一粒ひとつぶの尊さが、炊きあがりへの期待とともに、まぶしく輝きます。

    (監修:神野)

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  • 新米や ヘアドネーションの少年

    2022.10.19 放送

    作者:井上 涙香(松山)

    ヘアドネーションとは、医療用のウィッグを作るために、髪の毛を長く伸ばして寄付することです。少年も、ヘアドネーションのために髪を伸ばしているのでしょう。誰かのために努力できること、素晴らしいです。新米をもりもり食べて、すこやかに成長してゆく、頼もしい少年の姿を詠(よ)みました。

    (監修:神野)

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  • 我に足りぬは 新米のあの粘り

    2022.10.18 放送

    作者:句保田凡(松山)

    新米は水分量が多いので、もっちりと粘りをもって炊きあがります。私にも、あの新米のような粘りがあれば、もう少し違う結果が待っているのかも。新米に刺激を受け、力をもらって、人生に前向きに向き合う姿に、読者も共感し励まされます。新米のおいしさもたっぷり伝わりますね。

    (監修:神野)

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  • そつと研ぐ新米 ゆるく巻く銀河

    2022.10.17 放送

    作者:野口雅也(兵庫)

    新米を研ぐときは、研ぎ汁がたっぷりと白く濁ります。お米を傷つけないよう、そっとかき混ぜると、白いもやもやが研ぎ汁の中でゆるやかに渦を巻き、まるで宇宙の銀河のよう。暮らしに密着した新米の景色から、壮大な宇宙を引き寄せた、ゆたかな想像力の一句です。

    (監修:神野)

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  • 新米の 真ん中に割る 生卵

    2022.10.14 放送

    作者:三好(みよし)城(じょう)(松山)

    新米が炊きあがったら、まずはお米の味がしっかり分かるシンプルな食べ方をしたいですね。塩でおむすびにするのもいいし、卵かけごはんも最高です。「真ん中に」と表現したことで、堂々と卵を割り入れた臨場感が生まれます。新米のおいしさ、いただく喜びがあふれる一句です。

    (監修:神野)

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  • 新米は食べさせた 転校の初日

    2022.10.13 放送

    作者:ちかこ(東京)

    転校して初めて登校する朝、子どもたちもどこか緊張して不安そう。家族が学校についていくわけにもいかないし、子どもにしてあげられることは限られています。せめて新米を炊いて、朝ごはんで力をつけてもらって、行ってらっしゃいと明るく見送ります。頑張って。きっと、だいじょうぶ。

    (監修:神野)

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  • 新米の ひとつぶひとつぶが 主役

    2022.10.12 放送

    作者:宇都宮 駿介(松山)

    新米が炊きあがる喜びはひとしおです。蓋を開けたら、ひとつぶひとつぶが立って、それぞれが主役のように輝いています。「ひとつぶ」にフォーカスすることで、新米の尊さが際立ちますね。人間もひとりひとりが主役となって、それぞれの人生を生きています。今を輝く新米の命に、力をもらう一句です。

    (監修:神野)

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  • 新米を 研ぎたるみづの 真珠色

    2022.10.11 放送

    作者:染井つぐみ(兵庫)

    米をとぐと、表面に残った糠が洗われ、白く濁ったとぎ汁が出ます。命あふれる新米ならなおさら、ゆたかに白く濁るでしょう。そのとぎ汁の白さを、美しい真珠の色にたとえました。貴重な真珠のように、新米もまた尊いものだと教えてくれます。ささやかな日常の中にも、美は潜んでいるのですね。

    (監修:神野)

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  • 新米を 刈る軽やかな 鎌の音

    2022.10.10 放送

    作者:井上定男(西予)

    秋はみのりの季節。中でも新米がみのる喜びはひとしおです。鎌を使って刈り取る音を、軽やかな音ととらえることで、新米を得た喜びを明るく表現しました。今では機械で刈り取るのが主流なので、鎌をあやつる姿はなつかしさも感じますね。丁寧に収穫してくださった新米が、私たちの食卓に届きます。

    (監修:神野)

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  • 落花生干すや 子どものいない島

    2022.10.07 放送

    作者:高須賀あねご

    落花生は、繭に似て中央がくびれた黄色の莢を土の中で結びます。採収されるときも、カラカラと音を立てて鳴るそうです。高校進学と同時に島を離れると、子どもはもう島に戻って生活することはほとんどない、と聞いたことがあります。そのことを受け入れて暮らす島の人たち。干された落花生がもたらす明るさを感じます。

    (監修:谷)

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  • 秋の夜の 長き頬杖 夫の留守

    2022.10.06 放送

    作者:えのもとゆみ

    九月、十月になるとめっきり夜が長く感じられるので、「夜長」「長き夜」は秋の季語になっています。この句、夫と書いて「つま」と読みますが、夫の帰りを待ちわびているのでしょうか。それとも、ただぼーっと過ごしているか。せっかく一人の夜なので、二人だとそうはいかない頬杖をついて、物思いしていたいのです、きっと。

    (監修:谷)

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  • 秋の箱 何でも入るが 出て来ない

    2022.10.05 放送

    作者:星野早苗

    秋は、空気が澄み、紅葉し、穀物の収穫時期も到来。爽やかな季節でもあり、一方で、人恋しく、もの淋しい時候でもあります。そんな秋の箱に、散らかっていた物、思い出の物を片付けていきます。気分よくどんどん入れていきます。が、はたと気づきます。必要だった物を出したくて、また全部ひっくり返さないといけないことに。

    (監修:谷)

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  • 食ひかけの林檎を ハンドバッグに入れ

    2022.10.04 放送

    作者:高浜虚子

    食いかけの林檎は、丸かじりでしょう。店先で買った林檎をベンチで食べた。あるいは、朝ごはん代わりに、ハンドバッグに入れていた林檎か。この句に刺激され、久し振りに林檎を皮のまま齧ってみると、香りがぷうんと口中に広がり、本当の林檎を味わった気がしました。でもやはり、一度に一個は食べきれませんでした。

    (監修:谷)

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  • 曼殊沙華 すこしはぐれて みたくなり

    2022.10.03 放送

    作者:橋本薫

    曼殊沙華は岸の堤や田圃の畦道を辿るように咲く深紅の美しい花です。そんな道を仲間と歩いていて、ふと、みんなから逸れて一人の気分になってみたくなったのです。実際に行動に出たかどうかはわかりません。一本離れて咲いている曼殊沙華は、群れからはぐれて咲いてみたかったのかもしれません。

    (監修:谷)

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テレビ愛媛ではみなさまから
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5月のお題「葉桜(はざくら)」の
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応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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