2023年11月の俳句

  • 善き友や 年々同じ マント被て

    2023.11.30 放送

    作者:伊丹三樹彦

    「マントは」フランス語で、ゆったりとした外套のこと。最近では、防寒用のコートがとってかわりました。良い友というのは、毎年同じものを着続ける人だ、いう句。流行を追わず、身になじんだ上着を味方につけて現れます。そういえば、小説家の五木寛之さんは、40年以上も同じジャケットを愛用しているそうです。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 葱だけを 見てとんとんと 葱刻む

    2023.11.29 放送

    作者:岩田由美

    鍋物、味噌汁、和え物、薬味など、この季節ますます活躍するのが葱。スーパ―などでは、すでに刻んである葱が売られていて、つい手が伸びます。時短のため料理鋏を使ったりもします。そんな性急さにブレーキをかけられたような、ゆったりとした時間に引き戻されたような今日の句です。「とんとん」の充実を楽しみたいです。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • シーソーは 一人でできぬ 冬あたたか

    2023.11.28 放送

    作者:河内静魚

    季語「冬あたたか」は、冬に春のような暖かい日が訪れること。一日限りであったり、数日続くこともあります。散歩がてら公園のシーソーまで来て、当たり前のことに気づきました。久し振りに乗ってみたいけど、一人ではどうにも遊べない遊具だと。思わず苦笑するこの人の前で、春のようなシーソーが横たわっています。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 不機嫌な 一人は部屋に 石蕗の花

    2023.11.27 放送

    作者:寺井谷子

    石蕗はキク科で、初冬に鮮やかな黄色い花を咲かせます。癪にさわったことがあったのでしょうか。家族の誰か一人、機嫌を損ねて部屋に籠ってしまった様子です。お父さんか、それとも妹か。その一人を気にしながらも、家族の団欒は続きます。庭の石蕗の花が窓に明るく映えて、そろそろ不機嫌な誰かも、もぞもぞと部屋を出たくなっているでしょうか。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 焼藷を 抱へて待てり アシカショー

    2023.11.24 放送

    作者:音羽凜(東京)

    水族館でのひとコマです。アシカショーの客席で、焼藷を抱え、ショーが始まるのを待っています。冬の水族館の屋外は寒く、あたたかい焼藷を懐炉(かいろ)のように抱えます。誰と分けるのでしょうか。それとも一人?こんなところにも焼藷はあるのだと、驚き納得させてくれる一句です。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 遠距離よ 焼藷はまだ あたたかい

    2023.11.23 放送

    作者:藤田ゆきまち(三重)

    遠距離恋愛でしょう。別れ際に買った焼藷を抱いて、バスや電車に乗り込みます。少しずつ離れてゆく、君との距離。ふところの焼藷はまだあたたかく、さっきまで一緒にいた感触が、まだ残っています。「まだ」のひとことが、いつかは冷めてしまうことを予期してもいて、切なさが募ります。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 焼藷に 汚職の記事の 湿りをり

    2023.11.22 放送

    作者:山田 知明(神奈川)

    焼藷そのものではなく、それをくるむ新聞の記事に注目しました。政治家の汚職を告げる紙面が、焼藷の熱でしっとりと濡れています。この湿りけが、汚職という出来事のじっとり暗い印象を、感覚的に言いあてています。甘い蜜を吸うといった常套句も、焼藷の甘さと響き合い、上質な皮肉が効いています。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 書割を背に 焼藷喰ふ リア王

    2023.11.21 放送

    作者:竹本桂子(久万高原)

    リア王は、シェイクスピアの書いた戯曲の主人公です。栄華をほこったリア王が没落する悲劇を、現代に上演しているのでしょう。舞台の背景を描いた書割を背に、リア王役の俳優が、焼藷を食べています。生活者としてのなまなましい姿が、荒野をさまよったリア王の切実に、ふと重なります。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 焼き芋を ガードレールに 腰掛けて

    2023.11.20 放送

    作者:石塚彩楓(埼玉)

    道端に売りに来ている焼藷を買ったのでしょうか。そのまま、すぐ近くのガードレールに腰かけ、むしゃむしゃと食べます。冷たい風が吹き抜ける中で、焼藷のあたたかさが、ひときわ心身にしみわたります。ラフな姿がリアルな一句。おいしい焼藷、みなさんならどこで食べるでしょうか。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 焼藷の皮や 地球はどこより罅

    2023.11.17 放送

    作者:じゃすみん(新潟)

    さつまいもの皮が、よく焼けて罅割れています。もし地球にも罅が入るとしたら、どこからだろうと想像を広げました。地震や噴火といった災害や、各地でやまない戦火を思います。焼藷という身近な素材を通して地球の今を考えることで、自分のこととして受け止める近しさが生まれます。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 焼藷や 雇用延長申請書

    2023.11.16 放送

    作者:小藤たみよ(松山)

    雇用延長とは、本人が希望すれば定年後も引き続き勤められる、再雇用などの制度を指します。焼藷を食べながら、雇用延長のための申請書を書いているのでしょう。焼藷を買うにも、お金は必要です。生活感の強い季語が、現代の社会に生きる実感を、ありありと引き出しています。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 雨のコインランドリー 焼藷食む

    2023.11.15 放送

    作者:花見鳥(埼玉)

    コインランドリーで、洗濯が終わるのを待ちながら、焼藷を食べています。途中、冷たい雨が降る中で、焼藷屋を見つけ、思わず買ったのでしょう。冷えた体をほっと温めてくれる、やさしい甘さ。焼藷が嬉しく感じるシチュエーションを、街角の風景から見つけました。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 焼藷や 不死身の漫画 主人公

    2023.11.14 放送

    作者:星野テルカズ(宮城)

    漫画の主人公は、ピンチになっても、特別な力を発揮して、物語をパワフルに展開させます。現実には、どんな攻撃を受けても立ち上がるなんてことは、なかなかありえません。だからこそ、主人公に憧れるのです。ごろごろして焼藷を食べながら漫画を読んでいる、冬の一日の過ごし方が見えてきます。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 焼き芋や 塾の鞄に 反射材

    2023.11.13 放送

    作者:南方日午(東京)

    寒くなると、あたたかい食べ物が恋しくなります。焼き芋も、そのひとつ。焼いた小石で蒸し上げる石焼き芋もあれば、焚火やストーブで熱して作ることもできます。塾帰りに焼き芋を齧っているのでしょう。暗い夜道でも車にひかれないよう、鞄につけた反射材が、きらきらと光り、日暮れの寒さを深めます。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 蜜柑むく 宇宙旅行の 話して

    2023.11.10 放送

    作者:衛藤夏子

    蜜柑を食べながらの、宇宙旅行の話題が佳境のようです。テーブルの蜜柑を囲む家族、あるいは友人たちの眼がキラキラしていそうです。国内旅行、海外旅行。それが「宇宙旅行」という言葉が出てくる時代になるとは。日本人も数年前に実現させました。いつかは私たちも、と小さな蜜柑から広大な宇宙へ夢は広がります。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 寒き灯に みどり児の眼は 埴輪の眼

    2023.11.09 放送

    作者:篠原梵

    寒い冬の電灯の下で照らされた赤ちゃんの澄んだ黒い眼が、まるで埴輪のようだという句。「みどり児」という言葉と相俟って、濁りのない深い、神秘的な眼が見えてくるようです。寒さの中にも、家族が子を見守る暖かさを感じます。昭和初期に活躍した作者は、愛媛県伊予市に生まれ、松山で育ちました。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 冬が来て パジャマの袖の 長過ぎて

    2023.11.08 放送

    作者:ふけとしこ

    今日は立冬です。二十四節気のひとつで、俳句では冬の初日です。防寒や防風、地域によっては防雪のための冬構えの準備に入ります。心もぎゅっと身構える気がします。準備のその一つの、冬物のパジャマ。着てみると、指も隠れてしまうくらいの長い袖が邪魔になる。でも、そこはパジャマですから「まあいいか」と、布団にもぐるのでしょう。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 行く秋や 梢にかかる 鉋屑

    2023.11.07 放送

    作者:内藤丈草

    季語「行く秋」には、過ぎ去っていく秋を惜しむ気持ちが込められています。ゆらゆら揺れる梢の鉋屑は、秋を見送る心細さ、そのもののようです。どこからか鉋掛けの屑が舞い上がり、木の梢にかかった場面に目をとめた、繊細な一句です。作者は江戸時代の俳人で、松尾芭蕉の門人となり「蕉門十哲」と呼ばれる中の一人でした。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 吊橋や 百歩の宙の 秋の風

    2023.11.06 放送

    作者:水原秋櫻子

    秋の風には、穏やかな風、台風のような強風もあり、また、晩秋の風はものさびしく感じます。吊り橋は板橋を渡っているのでしょうか。「百歩の宙の秋の風」は、いかにもさわやかな川風を全身に受けとめているようです。歩くにつれてやや揺れ、まるで宙を歩いてゆくような快さ。私たちにも、同じ気分を体感させてくれる一句です。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • ゆらめいて この星もひとつぶの露

    2023.11.03 放送

    作者:正木ゆう子

    草の葉などに結ぶ露は、触れればすぐ零れてしまう繊細さを持ち、儚い命の象徴として詠み継がれてきました。ゆらめいて朝の光にきらめく露を見ていると、ふと、この地球もまたひとつぶの露のようなものだと感じました。小さい露と大きな地球。人間も、この星の儚さと尊さを壊さぬよう、ありたいものです。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 足の爪 触りにくる子 草の花

    2023.11.02 放送

    作者:春田のりこ

    年を重ねるにつれ、足の爪がいびつに変形することもあります。おじいちゃんやおばあちゃんの爪の形が珍しくて、お孫さんが、触ってみたいと近寄ってくるのでしょうか。草の花は、秋に雑草が咲かせる花の総称です。素朴で飾らないやりとりを、縁側の草の花がやさしく見守ります。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 木には木の 言葉のありて 木の実降る

    2023.11.01 放送

    作者:千鳥由貴

    秋には、シイやクヌギなどの木が団栗を落とします。つぎつぎに降ってくる木の実を、まるで木の発する言葉のようだと捉えました。団栗を拾うとき、それが木のつぶやきや呼びかけだと思うと、より親しく嬉しい気持ちになりますね。森のゆたかな沈黙に、心をゆだねます。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める

テレビ愛媛ではみなさまから
俳句を募集しています!

5月のお題「葉桜(はざくら)」の
応募は締め切りました

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
・テレビ愛媛は応募作品による権利の侵害等に対し、一切の責任を負いません。

個人情報の取り扱いについて

頂いた個人情報は、優秀句に選ばれた方への事前連絡並びに記念品をお送りする際にのみ使用させて頂きます。

俳句の応募はこちら

メールアドレスからの応募: 応募先メールアドレス

ハガキからの応募:
〒790-8537 テレビ愛媛「きょうの俳句」係

すべての俳句を聞く
掲載されている句がランダムで再生されます
すべて聞く/止める

最新の俳句

バックナンバー

pagetop